住宅を求める人の80%は、ごく一般的な要望である。
所要室のヒアリングを行うと、3LDKとか4LDKになってしまう。
夫婦+子供2人という家族構成であれば、16帖くらいのLDK、主審室、子供室2つ、水回り。
これに和室が加わったり、書斎が加わったり、たっぷり収納が加わる。

予算もだいたい相場が決まってくるので、2000万くらいが平均値ではないだろうか。
土地も平均的な土地であれば、自然と、だいたい総二階建てのボリュームとなり、庭と駐車スペースを確保する。

間取り図を立体におこし、窓をつけていけば、自動的に、住宅らしきものが出来上がる。
外壁の素材やら、屋根形状、庇などをくわえて微調整するとそれっぽい感じになる。
間取りに満足しているクライアントであれば、いいものが出来たとご満足いただける。

世の中の住宅の80%はそういったものであると断言してよい。

我々建築家はどのような事が求められているか。
別荘やらの非日常空間であれば、おもいっきり腕をふるう事も可能だ。
そこに求められるのは奇抜さや新規性といっていい。
しかし、そういったニーズは少ない。
建築家に依頼する数がマイノリティであるうえに、さらに、別荘などの不要不急のニーズはマイノリティになる。

ときおり、大胆な日常空間を求める人もいるのだが、ごくごく少数でしかない。

結局、我々は、間取りをあるていど遵守し、微妙な差異を加えているに過ぎないような気もする。

かなり大胆なプランを作るときもある。そういうときは、初回プレゼンでよろこんでもらう場合もあるのだが、持ち帰り、一週間くらい、現実の生活様式でシミュレーションし、両親やら友人やらの意見を聞くと、揺れ動き、修正依頼が来る。その修正内容は、ごくごく平均的な間取りに戻ったりするのが常だし、空間のゆとりであった部分も、収納を増やしたり、吹き抜けなどもやめて部屋にしたい、というケースになる。

そういったケースを多く体験してきたので、私などは、最初から、クライアントの要望を忠実に満たすようになってしまった。私の良い面でもあるし、悪い面でもある。

それでも、数々の受賞歴が示すように、いい作品と呼べるものを作ってきた。
インパクトのある外観デザイン、気持ちのよい内部空間。オーソドックスで使いやすい間取り。
そしてコストパフォーマンスが高い。

一般的な間取りが悪いわけではない。
私自身、自邸をつくる場合には、実験住宅のようなものを作りたい欲求があるのだが、おそらくは、オーソドックスなものを作るだろうと思う。
やはり、収納はある程度は欲しいものだし、ミニマムな極限のライフスタイルを続けれる自信はない。
ローンをくむのだから、コストパフォーマンスが高いほうがいいし、光熱費も少ないほうがいい。
断熱などもしっかりしていたいし。

間取りを遵守しながら、間取りを越えた空間を作り得るか。それが、建築家に課せられた命題であろう。

このままの私であってもいいように思うし、もっと変化しなければいけないような気もする。
私自身の認識でいえば、私の作る住宅はごくごくオーソドックス。そういった認識だ。

オーソドックスゆえに、これまで多くの住宅をてがけさせていただいた。
奇抜なものを追求するあまり、作品数にめぐまれない建築家も多い。
奇抜なものを求める層が圧倒的に少ないので、それは当然の帰着である。

まだまだ道なかばの私。40代の建築家もひよっこの部類。80代で円熟味のある建築を作る。そういった芸の世界だ。

確固たるスタイルが出来上がったと思う反面、変化していきたいという思いも募る、悩ましくも幸福な40代を過ごさせていただいている。