住宅設計のご依頼を頂いた方は、自己資金100%の方もいれば、住宅ローンをくまれる方、個人事業主や法人の場合にはプロパーの融資など、さまざまである。
いずれにしても、なんらかの銀行の扉をたたく事になる。
仮申込、仮審査、本申込、本審査をへて、契約、融資実行となる。

申込書類は、多岐に渡り、おそらくは、人生ではじめて取り寄せるであろう書類などがたくさん必要だ。
市役所、県税事務所、税務署、法務局、あちこちまわって、申請して、と、ひと仕事ある。
この段階で大きなストレスを感じる人もいるだろう。避けては通れない道だ。

所得や決算書類の内容に応じて、借り入れ限度額があるていど銀行毎に設定されており、仮審査の段階で、だいたいの目処が伝えられる。ここで、ほっと一息つけたならば、上出来だろう。
希望に達しないとなれば、他の銀行を探すしかない。
内々でオッケーがでれば、本申込に必要な追加書類を準備する。そして、本審査に望む。ここでひっくりかえるケースはまずない、とされているが、ドキドキするものだ。
なにしろ、この時点では、施工会社と工事請負契約をかわしているのだから。しかし、ローン特約があるので、大丈夫なのだが、前つんのめりになった感情の行き場がない。
この峠を越えると、契約、そして、融資実行、となる。
あとは、粛々と返済がスタートしていく、という事だ。

当然ながら、たくさん借りられる人もいるし、少ししか借りられない人もいる。
それと同時に、毎月の返済金額との兼ね合いもある。
自己資金をどれくらいにするか。
そういったバランスを見計らい、融資の詳細が決まって来る。

自動車ローンなどとは比較にならないくらい、プレッシャーがかかるものだ。

たくさん借りられるのも男の甲斐性のようにも思う。ドキドキするものだろう。
これまでの人生の借り入れ力の通信簿を突きつけられるような気分になると思う。

ときおり、銀行融資の仮審査を行っていないまま、物事を進める方がおり、すべてが決まってから、融資がおりない、と、大騒ぎするケースもある。担当窓口での相談レベルで見込み発車するのはよしたほうがいいだろう。
1年に一回、確定申告が出た段階で、仮審査をうけてみてもいいようにもおもうが、どうだろうか。
常に、今現在、どれくらい借り入れ力があるのか。チェックしておくのも、一家の大黒柱のつとめだろう。

銀行も一つではない。厳し目の銀行もあれば、融資に積極的な銀行もある。
ひとつの銀行の判断でへこむ必要はない。
金利を払うお客様の立場なのだから、複数の銀行を視野にいれておいてもいいだろう。

返済期間を考えると、最長の35年返済にしたほうが、毎月の返済額は少なくなるが、金利負担が大きくなる。いずれにしても、早めに決断しておいたほうが、完済したときに、余力が産まれる。
金利負担を考慮して、ちょっと無理して5年とか10年、せめて15年くらいで返済できると、楽になるだろう。

とはいえ、家づくりというのは人生の骨格が確定した時点になるので、なかなか難しいものだ。
晩婚化や少子化の影響もある。

当社のクライアントOBには20代後半の方もいた。
立派な事だと感じたものだ。計画性の高いご家族だなあと感心した。
定年後に自己資金だけで終の住処を作られる方もいる。
人生の中盤で、最初につくった住宅を転売し、二つめの住宅を作る方もいる。
圧倒的に、人生において一回こっきり、住宅を作る方が多い。

いずれにしても、定年退職前までには完済しておきたいのが心情だろう。

土地がある人は、建築工事費のみでいいので、ローン総額は低く抑えられる。
身内で遊ばせている土地があれば、有効に活用すべきだと思う。しかし、子供の教育の事を考えると、目的の学校区だとかが優先されるし、奥さんの実家の近所とか、子育ての支援などを期待して土地を探すケースも多い。ご主人の職場に近いとかの理由もあれば、あこがれの住宅団地とかの希望もあるだろう。

短期的にみればいろんな条件もあるが、子育て期間というのは、以外と短いもので、場合に寄っては高校から県外にというケースもある。住宅をつくったのはいいけど、子供達の部屋はそれほど使われなかった。そういうケースもある。

地方都市の場合、マイカーは必需品だし、歩いていけるところに、すべての公共施設がある必要もない。
結局、自転車でいける距離も車に乗っていくわけだから。
身内がせっかく持っている土地は、ありがたく使わせて頂く。それが、ベストだと思う。

そして、住宅を建てたとたんに転勤辞令が下る、というケースもある。
ご主人が単身赴任になったり、自宅を賃貸にしたりと、難しい対応をせまられる状況にもなる。

いずれにしても、住宅の取得を考え、銀行に相談に行くという時期は、その人の人生の方向性ががっちりと固まった時期であろうと思う。

銀行融資を決め、建築家と理想の家づくりを開始し、完成して引っ越しして必要な調度品がそろうまで、かなりのエネルギーを消耗する事になる。途中で不安な気分になることもあるだろう。
そういった時にサポートできるように、我々建築家は奮闘していかねばならない。

銀行融資を契約する直前の時期というのは、工事請負契約書も提出し、だいたい、事前に準備していた着工が目前に迫っている時期でもある。
プレッシャーがピークに達する時だ。
クライアントの融資が決定したときは、おめでとうございます、と、労をねぎらうようにしている。

よくよく考えれば、借金をして負債を抱えた事になるので、おめでとうございます、というべきではないのかもしれない。

とはいっても、銀行融資を受けないで自己資金だけでいこうとすると、いつになることやら。
金利をはらい、時間を買う。つまるところ、そういった事になるだろう。