家電量販店は増税前のかけこみ需要と引っ越しシーズンの新生活の準備でごった返していた。
新生活を始める人達。就職、転勤、大学入学。いろんな思いでいっぱいだろう。
あの、不安と期待のつまった独特な感情。
ついつい、自分も、当時の事を思い出す。

一番、インパクトが強かったのは、就職時に、会社の独身寮に入居したときだ。
独身寮は、ワンルームマンションのような構成であった。
いずれ、転売できるような仕様であった。

引っ越しを終えて、近隣の店に行き、生活用品をかいそろえる。
はじめて見る街、入った事のない店。
ああ、これから、始まっていくんだな、と、センチな気分になる。

レンタルビデオ店に行き、入会手続きをする。はじめての散髪屋さんに行く。
いきつけの食堂を見つける。
徐々に、その街の概要がわかってくる。探検気分でもある。

あの、なにか、甘酸っぱい気持ち。

二年おきに引っ越ししまくる人がいる。
更新料をとられるくらいなら、と、引っ越しするらしいが、定期的にこの刺激が欲しくなるのだろうと思う。
リセットできるからいいのだろう。

ベッドとふとんで気持ちよく眠れる状態をつくり、テレビをおいて、コードをつなぐ。
基本的なチャンネルが映る事を確認する。
ユニットバスで入浴のためのグッズをそろえる。
とりあえず、コーヒーくらいは飲みたいと、ヤカンや急須やカップをそろえる。
最初の夜は、買ってきたお弁当だろうか。

平日は仕事でおそくなりなにも進まないが、休日毎に、給料日毎に、部屋の内部が充実してくる。
なにもない部屋というのも、悪くはないのだが、不安を埋めるかのように、ちょっとづつ物が増えてくる。
よし、大丈夫だ。そういった感覚だろうか。

しだいに、安い電子レンジを買ったり、本棚くらいほしいな、と、カラーボックスなどを仕入れる。
ちょっと自炊でもしようか、と、小さな炊飯ジャー、調理器具。ちょっとづつ、生活の彩りが出てくる。

こうやって、どんどん、物が増えていくのだが。

3月末になると、このような記憶がよみがえってくる。