賃貸住宅などの収益物件は、非常に難しい要求が求められる。
建ぺい率、容積率は限度一杯に消化して、レンタブル面積を最大限活用するのが筋だ。
各種斜線制限も天空率などを駆使して、可能な限り上へ上へとのばしていかねばならない。
一階部分は、各種条例によって、それぞれのスペースの奪い合いとなる。

デザイナーズ賃貸を実現するには、空間の余裕や、外観デザインによる、アップ分のコストが上乗せされるため、利回りを下げる事になる。
利回りを重視するオーナーがほぼ99%である。デザイナーズと呼ぶにふさわしいものを実現するにはそうとうな器が必要だ。

デザインで差別化をはかって賃貸住宅の価値の延命をはかる、というのが、我々建築家の主張であるが、デザイン性に価値を見いだし、いくぶん高い家賃をはらってでも住みたいという人がマイノリティである以上、満室をキープできる保証はない。難しいところだ。結局は無難なものが都市を埋め尽くしていく。
であるから、通常は、諸条件から決まって来るガチガチの条件を満たしただけ、というものがほぼ全てとなる。

そのような、両手両足を縛られて猿ぐつわをはめられた状態で、なにか、やれる事はないのか。
そこにチャレンジしているのが、我々建築家でもある。

私の処女作であるK-SOHO。合計4戸の小さな賃貸長屋だ。プレハブメーカーの規格型アパートと同程度のコストでなにができうるか、という挑戦だった。
最終的に、RC造外断熱の薄肉床壁工法、メゾネット2戸、貸事務所2戸という構成の3階建て賃貸長屋として完成した。もう12年前の話だが、いまだに鮮度は落ちていない。

目下、沖縄でのコラボ案件の4階建ての賃貸住宅をまとめている最中だが、こちらは、引き受けた時点で、企画段階のプランがまとまっていた。たしかに、ガチガチの諸条件から、もうこれ以上のものはない、とおもわれた。このまま進行していっても、オーナーが満足するものはできるのだが、おそらく10年以上の時間に耐えうるものではないだろうと思う。もう一歩ジャンプさせてあげたい。

しかしジャンプの余地はどこにもないようにも見える。
うんうんうなって考えていると、一筋の光明が見えた。
施工床面積も減り、導線も整理され、駐車スペースも余裕がうまれる。

どのように進行していくかはまだ不透明だが、可能性はある。よし、アタックしてみようか。