優雅に水に浮かぶ白鳥も、その水面下では、必死に水かきしている。
このたとえ話はよくひきあいに出されるものだ。
先日、その実例をかいまみせて頂いた。

大学の大先輩、助手をつとめて、その後、華麗に転身。
日本最大規模の組織設計事務所にうつり、ビッグプロジェクトをまとめ、活躍している方。
有田さんだ。
オアシスタワーの設計チーフである。大分県で最大規模・最大高さをいまだに誇る複合建築物を大分大学の卒業生が設計する、という快挙をなしとげた人。基本構想は佐藤先生率いる佐藤ゼミがつくりあげたものである。大分大学の歴史に輝く金字塔といっていいだろう。

有田さんは、私が大学1年時に助手をされていた。設計課題のエスキスチェックなども行って頂いたものだ。
避難経路を考える歳に、「玄関が爆発炎上したらどこから逃げればいい?」と、ことある毎に爆発といって、学生を笑わせながら指導していた。私もその影響を受けており、ここが爆破されたら、と発想したり、指導する事も多い。

さて、この有田さんの必殺フレーズ「宴もたけなわではございますが」
学生時代の研修懇親会の宴席の場、最後をしめくくる有田さんの名台詞だ。
こういったベタな締め言葉が面白い。

私もこの影響から、飲み毎の締めをおおせつかったとき、「宴もたけなわではございますが」と多用させていただいている。必ず、ウケる。鉄板だ。

さて、この有田さん、カラオケの腕前は助手当時からばつぐんでエンターテイナーだった。
えびぞりしながら高温をたからかに歌い上げる。
あまりうますぎると嫌味なものだが、ここまでやっていただくと、ただただ感動。手放しで拍手。えびぞりに大爆笑。すばらしい芸である。

だんだん、有田さんも楽しくなってきたようで、かばんからゴソゴソとなにかのレポートを取り出している。
なんですか、と聞けば、カラオケのネタ帳であった。
さすが、設計者らしく、そのネタリストはおそるべき詳細なデータでうめつくされていた。

曲名、歌手名、曲番号、最高得点。キーの上下、ならびに、詳細採点のかく審査項目の個別点数が記録されている。
A4サイズで6枚くらい。200曲はゆうにあるだろう。
しかも、全ての曲が90点台を越えているのだ。

一人カラオケで最近の歌を練習するのは、もう当然。
点数をチェックし、そのつど記録し、弱点を強化し、自己記録を更新し続ける。
どのような場所でもチェックできるようにネタファイルはいつもかばんに潜ませているらしい。

あれだけ、えびぞりで熱唱するのだから、相当なカロリーを消費するだろう。
もはや、カラオケ健康法といってもいいだろうか。
脈拍や体重のデータを記録するのではなく、カラオケの点数を記録する。
課題曲が90点越えをするまでには相当な運動量になる。
ここまで徹底しているからこそ、どのような場でも芸としてカラオケを披露できるのか。
驚愕するばかりであった。

私も対抗してコブクロを歌う。過去3回100点を出した勝負曲だ。
一曲熱唱しただけで、ふらふらになるくらいに披露し、のどもすぐ枯れた。
ああ、古後君もなかなかやるなあ、と、余裕の表情でいなされた格好に終わる。

あのネタ帳を見れば、敵うはずもないと脱帽するしかない。
優雅な白鳥の水かきをかいま見せていただいた夜だった。